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2015年FATFガイダンスを読まずして金融庁の仮想通貨の規制を語ること勿れ

荀彧_Tango
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荀彧_Tango
コーポレート系インハウス弁護士です。プライベートで、仮想通貨・暗号通貨の前線を趣味で観測する観測室-Crypto Observation Postの管理人です。最近は主に規制関係とICO界隈が好きです。

刺激的なタイトルをつけてみましたが、金融庁はどのような方向性で規制をしようとしているのでしょうか?

 本稿では金融庁が規制を課す背景の一つとして、国際的なマネロン対策を求めるFATFのガイダンスをご紹介したいと思います。

金融庁については仮想通貨についても色々な声が上がっていますよね。ブロックチェーンを開発に近いエリアからは、金融庁がやたら過度な規制をしてイノベーションを阻害して邪魔しているように思える声を聞きます。一方金融系のみなさんからは、もっと取引所への規制を強化して取引の公正さを確保しないと健全な発展をしない、という声もよく耳にします(私はエンジニアでも金融系の人間でもありませんが)。

さて、どう言うことなんでしょうか。

金融庁は、金融庁なりの使命を抱え、また宿題を抱えています。

金融庁がどのような方向で規制をしようとしているかを予測するためには、脊髄反射的に反応する前に、金融庁が何を目指していて何を考えているか事前に理解しておくと見通しを持って反応できると思います。また、そのような点を押えておくと、金融庁に何か言いたいことがある場合についても建設的な議論もしやすいのではないかと思います。

そんな訳で、金融庁の規制の背景にある重要な要請としてのマネロン・テロ資金供与対策の動向を見ていきたいと思います。

ちなみに、金融庁は仮想通貨と呼んでいたのを夏頃から急に暗号資産と言い換えています。これは今年2018年7月のG20に報告されたFSBのレポートで Crypto-Assets(暗号資産)と言う用語を使っていること等を反映したものだと思います。ただ、普段仮想通貨という用語が使い慣れていることと今日ご紹介するFATFガイダンスでは、あくまで仮想通貨(Virtual Currency)との用語を使っていますので、とりあえず仮想通貨として以下進めたいと思います。

もちろん、私、観測所の運営人は、金融庁とは何ら関係はなく、当然ながら記事は公式見解の類ではなく、公表資料から分析した金融庁の動向についての個人的な見解にすぎません(後でご紹介するFATFについても同様です。)。

マネーロンダリング防止の経緯

金融庁はG20などの国際的な動きについてかなり敏感なような印象を受けます。もちろん、マネーロンダリングを防止して、テロ資金供与対策を実施するのは国際的な要請です。

この年表にも出てくる今日ご紹介するFATFとは何かと言いますと、Financial Action Task Force on Money Launderingの略で、日本語では、マネーロンダリングに関する金融活動作業部会、あるいは、単に金融活動作業部会と呼ばれ、マネーロンダリング防止やテロ資金供与対策についての国際協調を推進している政府間機関です。

金融庁の国際的な動きとの連動を示すため、マネーロンダリング防止関連と仮想通貨の規制について合わせた年表を簡単に作ってみました(黄色ハイライトは国際的な動き)。

  • 2008年 FATFからマネーロンダリング防止・テロ資金供与対策について第3次対日相互審査(THIRD MUTUAL EVALUATION REPORT OF JAPAN)において 不備について指摘
  • (2014年2月    Mt Gox民事再生法申請)
  • 2014年6月    FATFから日本を名指しで改善への警告(FATF calls on Japan to enact adequate anti-money laundering and counter terrorist financing legislation)
  • 2014年11月    犯罪収益移転防止法の再改正
  • 2015年6月   G7エルマウサミットFATFガイダンスにて仮想通貨に言及
  • 2015年7月 金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」の設置。仮想通貨の制度のあり方について議論。報告は2015年12月にこちら
  • 2016年3月   改正資金法の国会提出
  • 2016年6月   改正資金決裁法の成立・公布
  • 2017年4月   改正資金決済法施行 仮想通貨交換業の登録制スタート
  • 2017年10月 仮想通貨交換業の特例期間の期限

このイベントとイベントの間がどのぐらい空いているのか、確認してみてください。数ヶ月程度しか空いておらず、意外と近接していることがわかると思います。

2014年の頃の動き

実は、日本は2014年6月に、FATFから2008年に指摘された点が改善されていないとして早期改善を促す警告を受けているのです。

そのFATFからの警告内容としては、日本において、テロ資金供与を犯罪として刑罰の対象として完全には明確化されていないこと、顧客本人確認の義務付けの不徹底、テロ資金の凍結の仕組みの不完全性などです。組織犯罪ばっかりに注力していないで、テロ資金対策をしっかりするように、との指摘です。

FATFから、日本(金融庁)に対して、お前、やる気あるのかと言われてしまった訳です。

それを受けて半年後に犯罪収益移転防止法の再改正等を成立させているんですね。

法改正には時間かかりますから、結構迅速に対応しているように思います。

2015年の頃の動き

そして仮想通貨に話を戻しますと、2015年にG7エムマウサミット首脳宣言において、仮想通貨について規制するべき、その金融活動作業部会であるFATFの活動は重要だよ、と短いですがきちんと言及されています。

2015年6月にFATFから、マネーロンダリング防止という観点から、各国の規制当局は、仮想通貨の交換業者について規制を導入し、本人確認をするべしとのガイダンスが出されています。原文はこちら。金融庁事務局が作成したガイダンスの要約を引用します。

金融活動作業部会(FATF)のガイダンス(2015年6月26日)
各国は、仮想通貨と法定通貨を交換する交換業者に対し、登録又は免許制を課すとともに、顧客の本人確認や疑わしい取引の届出等のマネロン・テロ資金供与規制を課すべきである。

金融庁 「仮想通貨交換業に関する研究会 第1回事務局説明資料」 p.2 

そして、その1ヶ月後には早々に審議会を設置して仮想通貨の規制について議論を始めています。ステップを順々に踏んでその1年後には仮想通貨交換業に関する改正法案を成立させている訳です。

日本の当局に対する印象

年表を自分で作って眺めていると色々と気がつきます。なんかですね、眺めていると、日本としては、大分前にFATFに指摘され、何年も放置していた割に(当局的には何らか対応はされていたのかもしれませんが結果的には)FATFから改めて警告を受けた途端にものすごい勢いで反応して対応しているように見えます。

例えて言うなれば、宿題を出すのを忘れていて、先生から一度注意されていたのに放置してたら、先生から改めて名指しで呼び出されていい加減にしなさい!と怒られてしまい、慌てて宿題を猛スピードでこなして(やればできる感)出した感じの印象です。

個人的には、様子を見ている他国からは、日本はビビらせると言う事を聞くんだよね、と舐められていやしないか、ちょっと気になりますね。

とはいえ、穿った見方かもしれません。

善解すれば、即ち、いい方向に解釈すれば、まあテロの危険の認識が日本に暫く薄かったのは事実かと思いますが、FATFから仮想通貨もマネロン対策を強化するべし、との方針が出て、全面禁止する国もある中でイノベーションへの配慮もあり認めることとしつつも、FATFから以前から改善の警告もあったことだし、国内でもMt Gox事件もあり対策も必要ではあるし、ここは一つ、先進的に規制を導入して仮想通貨の枠組みについて当局の中でも国際的リーダーとなるべしとの精神で進めた、と解釈すると前向き感出ますかね。

皆様はどうご覧になるでしょうか。

ちなみに金融庁は、今年(2018年)の3月には、仮想通貨だけを対象とする訳ではないもののマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策 に関するガイドラインを出しています(リンクはこちら)。あえてこのガイドラインを出したのは金融庁および金融機関の置かれた大きな動きに歩調を合わせるものですし、これから述べる仮想通貨に関する規制とも沿っているものだと思います。

2015年FATFのガイダンスを紹介する意味

さて、仮想通貨の世界にいると技術的な発展のスピードは早く数年一昔の感がありますので、なぜ今更、3年前のガイダンスを紹介するのか、という点です.

 

それは現在でも金融庁その他官庁の規制の動向は、原則として2015年のFATFのガイダンスの枠内にあり、このガイダンスに忠実であるような印象を受けたからです。

 

先ほど挙げた金融庁の資料から引用ですと、FATFの要求は、登録制や免許制を導入しろ、という結論の部分のみが紹介されていますが、実際には各国に対する要求事項も種類が多く、裁量に任せている事項も割と明確な印象ですので、読んでいると、金融庁の規制はここのあたりはガイダンスに正面から応えていて、この辺は金融庁の裁量なんだな、と感じました。FATFの出したガイダンスを確認して、金融庁の出した宿題の答えがどの程度対応しているのか、確認したくなってきませんか?

確認したくなりますよね?

ちょっと長いけどよろしいでしょうか?

 

 

ありがとうございます!(すみません。1人ボケ1人ツッコミ好きなんです….)

という訳で、マイペースに規制マニアサイトを目指す観測所ーCrypto Obeservation Postとしては、初心に帰り、我が国の仮想通貨規制の源流の一つであると思われるこのFATFのガイダンスを紐を解いてみたいと思います。

なお、以下引用するFATFのガイダンス (GUIDANCE FOR A GUIDANCE FOR A RISK-BASED APPROACH TO VIRTUAL CURRENCIES) の内容に関して、当然ながらこのブログはFATFの公式見解を代表するものではありません 。

ガイダンスの勧告(Recommendation)の紹介

ガイダンスのパラグラフ21、Section IIIぐらいからAML/TF(マネーロンダリング及びテロリスト資金供与対策)の各勧告が、仮想通貨(VC)にどう導入されるかについて、説明しています。では、FATFのマネロン・テロ資金供与対策の勧告を仮想通貨に適用しているので、ガイダンスで紹介されている勧告を全て列挙して順番に見ていきましょう(勧告番号は飛び飛びですが、FATFのガイダンスでもそうなっています。)。

Section IIIとSection IVに分かれていますが、Section IIIは各国当局に対するマネロン・テロ資金供与対策の勧告をいかに仮想通貨に適用するかについて、Section IVは対丸々について同様の趣旨の内容となっています。この記事では規制という文脈ですので、Section IIIの内容を紹介したいと思います。流石に勧告の適用についての全文だと冗長になってしまいますので、列挙されている勧告ごとに内容を抜粋したいと思います。

翻訳は私の仮訳です(FATFから引用&翻訳内容について許可をとりました。ちょっとその配慮もあって大胆な意訳がしずらく、割と忠実に訳しています。そのため、翻訳調になってしまって若干申し訳ないです。)。

Recommendation 1

The current FATF Recommendations make clear that countries should apply a RBA to ensure that measures to prevent or mitigate ML/TF  risks are commensurate with the risks identified….

“GUIDANCE FOR A GUIDANCE FOR A RISK-BASED APPROACH TO VIRTUAL CURRENCIES”, FAFT, 2015, p.8, para 23

現FATF勧告によって明確になっているのは、各国は、リスクベース・アプローチを採用し、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与(以下「マネロン・テロ資金供与」という。)のリスクを防止し緩和する措置が、それぞれのリスクに見合っていることを確認するべきことである。…

ここで一言。原文でRBAとなっていますがRisk Based Analysisの略称です。リスクベースのアプローチという単語がマネロン規制の文脈ではよく出てきます。この後でもよく出てくる表現です。犯罪収益移転防止法についてもリスクベースの考え方が導入されています。

リスクベースのアプローチとは、何かを書くだけでかなりの分量の記事となってしまいますが、ざっくりと説明してしまいますと、リスクを分析した上で、リスクの度合いに応じた対応措置をとることです。すなわちハイリスクであれば厳重な対応をとり、中程度であれば中レベルな措置、低いリスクであれば簡易な措置をとれば良い、というアプローチですね。

ちなみに、文中のML/TFは、Money laundering/Terrorist financing:マネーロンダリング・テロ資金供与の略語です。

Due to anonymity and the challenges to conduct a proper identification of the participant, convertible decentralised VCPPSs in general may be regarded of higher risk of ML/FT which would require the application of enhanced due diligence measures….

Ibid

法定通貨と交換可能な分散型仮想通貨の支払いサービスとプロダクトは、匿名性を有しており、参加者を適切に特定することが困難であるため、一般的にマネロン・テロ資金供与のリスクがより高く、より重点的に管理する措置が必要となる。…

(注)VCPP:Virtual currency payment products and services(仮想通貨の支払いのプロダクトとサービス)

法定通貨と交換可能な仮想通貨はいわゆる我々がイメージする”仮想通貨”のことです(ビットコイン等)。ガイダンスでは、法定通貨と交換できない仮想通貨(バーチャル・カレンシー)の例として、ゲーム内でのみ使用される通貨のような法定通貨と交換できない通貨を列挙しています。これからの訳語で、法定通貨と交換可能な仮想通貨、と出てきたら、要するにいつも話をしている”仮想通貨”ね、と思って読んでくださいませ。

National authorities should consider undertaking a coordinated risk assessment of VC products and services that (1) enables all relevant authorities to understand how specific VC products and services function, fit into, and impact all relevant regulatory jurisdictions for AML/CFT  (e.g., money transmission/payments mechanisms; VC ATMs; commodities; securities) and (2) promotes similar AML/CFT treatment for similar products and services having similar risk profiles….

Ibid, p.8, para 25

各国当局は、仮想通貨のプロダクトやサービスに対応するリスク評価を実施することを検討するべきであり、それにより(1)全ての関係当局が、特定の仮想通貨のプロダクトやサービスが、マネロン・テロ資金供与対策に関する規制の適用範囲(送金、支払、仮想通貨のATM、商品、証券等)にどのように作用し、適合し、影響を与えるかを理解することができるようにし、また、(2)同等のリスク・プロファイルを有するプロダクトやサービスについては、同レベルのマネロン・テロ資金供与防止の措置を取ることを促進するべきである。

(注)AML/CFT: Anti-money laundering purposes/Countering the financing of terrorism(マネロン・テロ資金供与対策)

これは、まずどの省庁がどの側面から管轄するのかをはっきりしましょう、という内容です。日本の場合は金融庁の管轄にほとんど入りますね。ただ、警察、消費者庁についても管轄が出てきます。例えば、経済産業省は商品先物取引を管轄においているけど、仮想通貨は基本的に資金決済法で対応するから当面関係ないよ、とかそういう省庁間の規制について所管の法令に従い整理をしましょう、と言うことですね。

 According to this risk assessment, countries should decide to regulate exchanges platforms between convertible virtual currencies and fiat currencies (i.e., convertible virtual currency exchangers)….

Ibid, p.9, Para 28

このリスク評価に従って、各国は(法定通貨と交換可能な、所謂)仮想通貨と法定通貨と間の取引プラットフォーム(要するに、仮想通貨の取引所)を規制することを決断するべきである。

→これが、金融庁が資金決済法の改正により、仮想通貨の取引所について仮想通貨交換業の登録制を敷いて規制を導入する出発点になったことが見て取れます。マネーロンダリングのリスクが高ければ、その点に関しては、取引所をしっかり規制しましょう、と言う訳です。現に仮想通貨交換業として対象になっている取引所について金融庁が神経を尖らせているのは、まさに現金と仮想通貨を交換するポイントとなるために、非常にハイリスクだと考えているから、と言う訳ですね。

Recommendation 2

Recommendation 2 requires national cooperation and coordination with respect to AML/CFT policies–including in the VC sector.

Ibid, p.9, para 29

勧告2号に基づけば、各国は、仮想通貨を含むセクターについてマネロン・テロ資金供与防止に関する相互協力体制を構築するべきである。

→ちょっと抜粋が短すぎたかもしれませんが、これは国内の当局間でも相互協力体制を作りなさい、と言う妖精です。

何か思い出しませんか?

そうです。

例の今年2018年6月に開催された金融庁と警察庁と消費者庁とで仮想通貨交換業について集まった3省庁局長級連絡会議だったりするのでしょうか。そうに違いありません!そのまんまと言えばそのまんまですね。3省庁局長級連絡会議の内容についても知りたいところですが、非公開となっています(プレスリリースはこちら)。

このガイドラインをみているとFATFの勧告そのほかをベースに、マネロン・テロ資金対策をベースに無登録者やそのほかの問題にどのように対応していくか、という議論をしているのではないかと想像しています。

Recommendation 14

Recommendation 14 directs countries to register or license natural or legal persons that provide MVTS in the country, and ensure their compliance with the relevant AML/CFT measures.

Ibid,p.9 para 32

勧告14号の指令に従い、各国は、国内の資金移動サービスについて、個人または法人の事業者に対して登録または許可制を導入し、彼らがマネロン・テロ資金供与防止措置との関係で法令遵守をしているよう確認するべきである。

→これは仮想通貨という電子情報の移動を通じての資金移動を含めて規制するべきという趣旨です。その意味では、資金決済法の仮想通貨交換業について登録を要件とした改正と符合しますね。

Recommendation 15

It requires countries to identify and assess ML/TF risks relating to the development of new products and new business practices, including new delivery mechanisms, and the use of new or developing technologies for both new and pre-existing products. Recommendation 15 also requires countries to ensure that financial institutions licensed by or operating in their jurisdiction take appropriate measures to manage and mitigate risk before launching new products or business practices or using new or developing technologies.

Ibid, p.10, para 35

勧告15号によれば、各国は、新規プロダクト及び新規の商慣習(新しい送金の仕組みを含む。)及び仮想通貨を含む新規の未だ存在していないプロダクトのための新規又は開発中の技術を利用することに関連して想定されるマネロン・テロ資金供与のリスクを特定し、評価するべきである。同勧告は、各国が、許認可を受け、あるいは当該国の管轄下において運営する金融機関が、製品や新しい事業や新しい技術のローンチ前に、リスクを管理し軽減するために適切な措置を講ずることを確保するべきである。

→これは新しい技術にも対応しろ、と言う話です。新しい技術が出てきたらぼーっとしていないで早く対応できるようにキャッチアップしろ、ということですな。

Recommendation 16

Recommendation 16 establishes the requirements for countries with respect to wire transfers. Recommendation 16 applies to cross-border wire transfers and domestic wire transfers…In this regard, countries may adopt a de minimis threshold for cross-border wire transfers no higher than USD/EUR 1 000.

Ibid, p.10, para 36

勧告16号は、電信送金についての各国における要件を定めている。勧告16号は、各国の海外送金と国内送金に関して適用される。…この点で、各国は、特に仮想通貨取引所が、仮想通貨と法定通貨の交換に関して、海外電信送金を実施する場合には1000USD/EURを超えない額を最低基準額として、最低基準額を設定することができる。

→これは、電信送金について本人確認を必要とする際の最低基準額についての勧告ですね。

さらっと流しましょう。

Recommendation 26

Recommendation 26 requires countries to ensure that convertible VC exchangers which act as nodes where convertible VC activities intersect with the regulated fiat currency financial system are subject to adequate regulation and supervision.

Ibid, p.10, para 37

勧告26号によれば、(法定通貨と交換可能な)仮想通貨の交換者が、その仮想通貨に関する活動と法定通貨に関する規制下の金融システムとが重なり連結するノードとして事業活動する場合、各国は当該交換者(訳注:すなわち法定通貨による出入金が可能な仮想通貨取引所)が、マネロン・テロ資金供与防止の観点から、十分規制、監督に服していることを確認することが求められている。

→仮想通貨の取引所に対してはまさに仮想通貨交換業として規制して監督下に置いています。特にコメント不要ですかね。FATFがマネロンの視点で一番気にしているのは、やはりマネーロンダリングの入り口と出口となる、仮想通貨が現実の法定通貨(fiat)と交換ができるポイントということかと思います。ここは、コインチェック事件のみならず、Zaif事件も起きたところですし、金融庁としても引き続き登録を認めた取引所についても無登録業者についてもしっかり監督しなければと考えていることが導き出せますし、この点に関しては私もそこはしっかりやって欲しい訳です。他の金融機関でもこのマネロン・テロ資金対策はしっかり対策している訳ですからね。

Recommendation 35

However, at present, VCPPS, especially decentralised convertible VCPPS, presents numerous challenges to applying traditional law enforcement tools and conducting successful prosecutions. The current anonymity of most decentralised VC transactions makes it difficult to determine the identities of the persons involved….

Countries should conduct a review of the challenges that exist in their specific country context to identify potential gaps and take action, as appropriate. …

Licensing or registration of VC-exchangers, and application of customer identification/verification and record keeping requirements, could provide a pathway enabling countries to better apply effective and dissuasive sanctions in the VC context….

Ibid, p.10, para 38

(しかしながら、)現状、法定通貨と交換可能な仮想通貨の支払いに関するプロダクトとサービス、特に分散型の(法定通貨と交換可能な)仮想通貨の支払いに関するプロダクトとサービスに対して、伝特的な法を執行し、有効な刑事責任を問うことついては、数多くの困難に直面している。ほとんどの分散型の仮想通貨取引は、現在匿名性のために、関与した者の本人性を特定するのが困難となっているのである。

各国は、各国特有の課題について、適宜、潜在的なギャップを特定し、それを埋めるべく行動をとるため、各国に存在する特有の課題についてレビューを実施するべきである。

仮想通貨の交換者に対する許認可と顧客の本人確認、記録保管を要請することによって、各国は仮想通貨における効果的で抑止力のある制裁をより良く実行する方策を採ることが可能となるであろう。…

→金融庁は、登録した仮想通貨交換業者が取り扱うことができる仮想通貨を指定しています(いわゆる、ホワイトリストですね)。そしてMonero等の匿名性の高い所謂、匿名仮装通貨は認められていない運用ってこの勧告に由来しているのではないか、という印象を受けました。

ただ、この勧告では、匿名性の高い点にリスクがあるよね、と言う点は問題視していますが、このような限定列挙のホワイトリスト方式を採用するかどうかまでは触れられておらず、この辺りが金融庁の判断としての裁量の範囲ということでしょう。ベストプラクティスとして、本人の特定が困難になる可能性がある匿名性の高い仮想通貨に関するriskを徹底的に一切排除しようとしたのかもしれません。ただ、他が全部認められていないのに、でもこれをなんでこんな仮想通貨を入れたのかな、と言うコインやトークンも結構あるように思えます。ホワイトリスト方式の採用と、どの仮想通貨を認め、どれは認めないのか、と言う点は、FATFの勧告と関係がない純粋に金融庁の判断と言うことも分かり、どうあるべきか、と言う点も含め、色々と盛り上がれるトピックであることが確認できたように思います。他の国の運用例も気になってくるところです。

Recommendation 40

Recommendations 40 requires countries to provide efficient and effective international cooperation to help other countries combat ML, associated predicate offences and TF…

Ibid, p.11, para 39

勧告40号の要請によれば、各国は、仮想通貨に関する問題を含めたマネロン、それに関連して併合される違反及びテロ資金供与と闘う他国を支援するため、各国間での効率的かつ効果的な国際的協力関係を構築するべきである。

→国際協力を要請する内容です。疲れてきましたので、それっぽい写真で逃げましょう。

金融庁も当局同士の連携を強調していますし、こちらも相当進んでいることと推測します。

当局ではなく関係事業者に対するFATFガイダンスの適用(Section IV)

It is recommended that countries encourage transaction monitoring, commensurate with the risk. The public nature of transaction information available on the blockchain theoretically facilitates transaction monitoring, but as noted in the June 2014 VC Report (Appendix A), the lack of real world identity associated with many decentralised VC transactions limits the blockchain’s usefulness for monitoring transactions and identifying suspicious activity, presenting serious challenges to effective AML/CFT compliance and supervision.

Ibid, P.13 par48

各国がリスクに対応した取引監視をすることを奨励することが望まれる。ブロックチェーンにおいて入手可能なトランザクション情報がパブリックである性質は、理論的には取引監視を促進することになるが、2014年6月仮想通貨レポート(別紙A)において言及されているように、多くの分散型仮想通貨トランザクションに関連して現実世界における本人確認が欠如していることにより、ブロックチェーンの取引監視及び疑わしいf活動を特定することに対する有用さが制限されてしまっており、これはマネロン・テロ資金供与対策を効果的に遵守させ監督することに対する深刻な挑戦を突き付けているのである。

これもFATFのガイダンスからの抜粋なのですが、当局向けの勧告ではなく、仮想通貨の取引業者などに対して、FATFのマネロン・テロ資金供与対策の勧告がどのように適用されるかを示したガイダンスのセクションから、興味深いと思い抜粋したものです。

こちらを挙げたのは、先日8月末のあたり警察庁から仮想通貨の取引をモニタリングするソフトの解析に出資するというニュースを思い出したためです(例えばこのニュース記事)。このニュースだけ突然見ると、何事?警察が仮想通貨取引を監視することになったの?日本は規制強化なの?とびっくりする方もいらっしゃるかと思いますが(いませんか。笑)、私はこのガイダンスをちょうど読んで、そもそも各国において取引監視をしろ、という上記ガイダンスを読んでいたので、まさに、この勧告への対応なんだろうな。これは警察の宿題になっていて多分自力での解決が困難だったので、ツールがないなら解析できるソフトウエアを開発しよう、との話になったのではないかな、とか、あれこれ想像していました。

ガイダンス読んで思ふこと

お疲れ様でした。ここまで読んでいただきありがとうございます。

金融庁のこれまでの規制に関する方向性は、概ねFATFのガイダンス勧告の枠内であったことが見て取れると思いますが、いかがだったでしょうか?

そもそも仮想通貨の成り立ちや由来から当局や国家からの自由を模索する流れがあるのは承知していますが、一方でマネーロンダリングに関する規制については国際的な動きと連動していることが明らかです。この視点からの取引所に対する規制や監督については緩むことは想定しがたいと思います。また他の金融機関に対する規制とのバランスから考えても、マネロン対策・テロ資金供与対策に繋がる部分については、あえて仮想通貨に関する取引所と他の金融機関を区別する理由がない部分かと思います。良し悪しは別として、当局目線では、規制の枠組みについて全面禁止をしない場合におけるFATFガイドライン対応の一つのモデルとなる可能性もあるかもしれません。

ただ、一方でガイダンスを読んでいて思ったのですが、リスクベースのアプローチと言われていますが、日本の規制が本当にリスクベースの対応になっているのか、という点は少し興味が湧きました。対日相互審査において規制の仕組みがリスクベースの対応になっていない点を指摘されていたことからも考えるに(現在は、犯罪収益移転防止法についてリスクベースのアプローチを取ることが明言されていますが)、日本では元々あまり馴染みの薄いコンセプトだったのかもしれません。段階に分けてのアプローチと言うよりは、リスクを排除するため、安全サイドで画一的に一律の線を引いてしまえ、と言う対応になりがちではないかと想像します。

例えば、1号仮想通貨について登録制を課すのはガイダンスの要請そのものだと思いますのでやむを得ないところかなと思いますが、一方で1号仮想通貨と交換可能な仮想通貨、すなわち2号仮想通貨の交換について、例外を設けず広く一律に業として仮想通貨交換業の登録制を課している点については、国内におけるDappsやDEXの開発の妨げになっているやに耳にします。この辺り、はたしてそこまでの規制が必要なのか、適用除外などを設ける余地がないのか、についてはリスクベースのアプローチの点からも議論の余地があるように思います。

この辺りの問題意識は、他国の規制例や技術方面について私も勉強していきながら、引き続き考えてみたいと思います。

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